ロボコンにおける安全対策を考える

投稿者: | 2018年5月11日

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概要

近年のロボット競技、特に対戦型やタイムアタック型競技では、機体の高速な移動が必須となっており、それに伴うアクチュエータの高出力化が顕著である。
一方で、それらのロボットは大会で義務付けられている最低限の安全対策しか行われていないことがあり、競技中に暴走状態にしばしば陥る。高出力なロボットが暴走すると、フィールド・ロボットにダメージが及ぶだけでなく、競技者が負傷する可能性も高い。

ロボカップの大会中ヒューズが2,3回飛んだ経験から、今回はロボットの安全対策の方法を幾つか紹介する。

安全対策

緊急停止スイッチ

名前の通り。押せば止まる。ボタン+リレー等で設計するのが望ましい。

注意点

  • 電源との間に直接挟む場合、大電流を流せるボタンを選定する必要がある。不適切なものを使用していると接点が溶着してしまい、スイッチが機能しなくなる可能性もある。
  • 暴走状態に落ちいたとしても推しやすい場所に設置する。
  • 緊急停止スイッチは必ず回路的に遮断する設計にする。「押したらマイコンの出力を止める」などは厳禁。
    例えばFETのドレインソース間が貫通してしまった場合、マイコンで出力を停止してもモーターは回り続けてしまう。

電力ヒューズ

電力ヒューズとは、定格以上の大電流が流れた際に、ジュール熱で溶断されて回路を遮断する保護装置のことである。

交流用と直流用があり、特性が違うため注意が必要である。ロボット競技はバッテリー駆動が殆どのため、基本的に直流用のものを用いる。

モーター等で突入電流がある場合はタイムラグ溶断型のヒューズを用いるのが望ましい。

ロボカップSSLチーム”Scramble”では、ヒューズホルダーには秋月電子で販売しているFUC-03A を使用し(Eagle library)、ヒューズ本体はモノタロウで販売されているミニ管ヒューズ(10A)を使用した。

より大きな電流量に対応するには平型ヒューズを使えば良いと思われる。

ハートビート

ハートビートとは、接続された機器が動作していることをネットワーク上に存在する他のデバイスに知らせるために定期的に発信する信号のことである。

マスターノードから回転命令がモータードライバ送られた後、通信線が断線してしまった場合を考えてみる。
通信が行えないためマスターからはモータードライバに停止命令を送ることができず、このままではモーターが回転し続けてしまう。
ハートビートを実装している場合、一定時間以上マスターからデータが来ないことでモータードライバ側が以上を検知し、停止することが出来る。

ウォッチドッグタイマー

ウォッチドッグタイマーとは、定期的に発動することでシステムが正常に機能していることを確認するためのタイマーである。

マイコンが何らかのエラーでハングアップした場合、停止命令を送ることが難しい。しかし、ウォッチドッグタイマーを実装していた場合、一定時間後にタイマが作動し、マイコンを自動的にリセットすることができる。
この時、初期化処理に停止信号を含めることで、ロボットは安全に停止することが出来る。

最後に

ハード面・ソフト面での安全対策をいくつか紹介した。

ロボット競技では製作時間の都合上、安全面にまで気が回らないことが多いと思われる。
しかし、モータードライバを共通ユニット化し、その中に安全対策を組み込む等の工夫を行い安全な競技運営に協力していくことも、参加者の責務ではないだろうか。

参考資料

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